
「10日間の留学で、本当に意味があるの?」
費用も時間もかかるのに、たった10日。わが家も、申し込む前は同じことを考えていました。
結論からお伝えします。短期でも、行く価値はあります。ただし条件があって、お子さん自身に「行きたい」という気持ちがあること。ここが欠けていると、短期留学はむしろ逆に働きます。

わが家は息子が小1のとき、セブへ10日間の親子留学をしました。語学学校に通ったのは、そのうち1週間です。
この記事でわかること
- 10日間でわが子に起きた変化(学校のテスト結果つき)
- 現地で見た「行かせないほうがよかった子」の共通点
- 行く前と滞在中に、親ができること6つ
Contents
10日間の親子留学で、息子に起きた変化
英語力の向上は、正直まったく期待していませんでした。わが家のねらいは、こちらだったからです。
わが家が親子留学をした理由
- 日本の常識は世界の常識ではないと気づく
- 世界は広く、いろんな人がいると知る
- 英語が話せるメリットを体感する
- 英語により興味を持つ
- 広い視野を持つための経験の1つにする
これなら海外旅行でもよさそうですが、息子は友達と遊ぶのが大好きな子でした。だから、同年代と出会いやすい語学学校の滞在を選んでいます。
英語力|1週間でレベルが3つ上がりました
学校では、初日と最終日にテストがあります。結果がこちらです。
| 評価項目 | 初日 | 最終日 |
|---|---|---|
| Vocabulary(語彙) | A | A |
| Grammar(文法) | C | B |
| Pronunciation(発音) | D | B |
| Intonation and Rhythm(抑揚) | D | C |
| Writing(書く) | C | C |
| English Level | Beginner-0 | Beginner-3 |
*レベルは下から Beginner 0〜3 → Intermediate 1〜3 → Advanced 1〜3 の順です。
初日は最下位からのスタートでしたが、卒業時には3つ上がっていました。

とくに変わったのは、発音と強弱のつけ方です。ここはDからBへ、2段階上がっています。文法や語彙は1週間では動きませんが、音は子供のほうが早いです。
英語への意欲|質問の中身が変わりました
帰国後、いちばんはっきり感じたのがこれです。

この質問が、ぐっと増えました。そして、聞いてくる中身が変わっていました。
留学前は、単語だけを知りたがることがほとんどでした。りんごは何て言うの、犬は何て言うの、という具合です。
帰国後は、「これをお願いしたいときは何て言うの」と、会話の文で聞いてくるようになりました。伝えるために英語を知りたい、という聞き方に変わったんです。
生きた英語を、自分から取りにいくようになりました。
自信|声の大きさが変わりました
先生にたくさんほめられたおかげで、英語を口に出すことに自信を持つようになりました。
学校の先生やスタッフの方に、「Hi!」「Good morning!」「Thank you!」と、はっきりした声で言えるようになったんです。

そして、卒業生全員が行うスピーチ。うまく言えなくて悔しい思いもしたようですが、緊張しながら最後までやりきりました。この経験は、息子を一回り大きくしたと感じています。
気づき|日本との違いを、体で知りました
貧富の差
街中にいると、そこまで違いは感じません。でも少し道をそれると、経済的に豊かではない様子が目に入ります。家や服装を見て、子供心にも感じるものがあったようです。治安の話をしたときは、すごく驚いていました。
だからといって、心が貧しいかはまた別の話です。何を幸せと考えるかも、人それぞれ。難しい問題ですが、息子が感じたことを彼なりに考えていってほしいと思っています。
トイレと虫
トイレのきれいさは、日本とはかなり違います。ある程度のお店なら清潔ですが、アクティビティで訪れる観光地は、覚悟して入らないとドキッとします。
現地のトイレで驚いたこと
- 水の勢いが弱い。流れたらまだいいほうで、そばのバケツから水を汲んで流す場所も珍しくない
- 紙は流さず、横のゴミ箱に捨てる
- アリなどの虫がいるのは当たり前。トイレットペーパーにもよくいる
息子は潔癖気味なところがあるので、最初はかなり戸惑っていました。それでも、数日であっさり慣れています。私も虫は苦手ですが、「これも異文化」と思えば乗り越えられました。
ただし「行けば何か変わる」は、ちがいます

ここからが、いちばんお伝えしたいことです。
滞在中、たくさんの学生さんに会いました。一人で来ている中学生もいて、本当に驚きました。

ところが、子供たちの話を聞いていて、はっとさせられました。
話を聞いた半分以上が「親に言われたから」でした
子供たちは、はっきり2つに分かれていました。明るい、大人しいではなく、英語を学ぶ姿勢の話です。先生への態度も、友達同士の会話の中身も、まったく違いました。
違いの理由を聞いていくと、ひとつに行き着きました。その留学に、自分の意思があったかどうかです。
自分の意思で来た子
「将来の夢のため」「仕事で英語を使うから」「海外が好き」「英語を話せたらかっこいいから」。理由を持っている子は、生き生きしていました。
授業が難しくて戸惑いながらも、身振り手振りで伝えようとする。スピーキングを伸ばしたいからと、自分から先生に話しかける。ついていけずに落ち込む日もあったようですが、地に足をつけて頑張っていました。

不本意だった子
問題はこちらです。話を聞いた半分以上の子が「親に言われたから」と、嫌々来ている状態でした。
実際に見た様子
- 不満そうな表情ばかりしていた子
- 英語が嫌すぎて、どんなときも日本語を貫こうとする子
- 陽気な先生をうんざりさせるほど、授業態度が悪い子
- 帰国の日を毎日カウントダウンしている子
- 生活環境そのものに、最後まで文句を言っている子
「最初は前向きでなくても、行けば何か感じるかもしれない」。そう願った親御さんも、きっといたと思います。でも、子供たちには伝わっていませんでした。
英語が得意なのに、楽しそうではなかった高校生
中には、先生の話を最初から聞き取れるほど英語が得意な高校生もいました。それなのに、まったく楽しそうではないんです。
気になって聞いてみると、納得でした。
その子が話してくれたこと
- 同じ時期にあった部活の合宿に参加したかった
- 日本の学校の宿題が山ほどあって、やる時間がない
- 朝から晩まで授業でしんどい(学校には外に出る時間がある日もあるのに、親御さんの意向で授業に変更されていた)
自分の気持ちをくんでもらえないまま、一方的に英語漬けの生活を用意されていました。それは不満もたまります。
短期間で英語力は伸びたかもしれません。でも、この留学は彼の中でどう消化されるのだろうと、考えずにはいられませんでした。
留学カウンセラーが、止めることがある理由
以前お話を伺った留学カウンセラーの方が、こう言っていました。
相談に来られた方は、できれば背中を押してあげたいと思っています。ただ、留学を止めることがあるんです。それは、ご本人に行きたいという意思がないときです。
理由は、環境に耐えられなくなって苦しむ子がいるからだそうです。現地で子供たちを見て、まさにこのことかと思いました。
このときは春休みの短期留学の子が多かったのですが、これが長期だったらと考えると、かなりきついです。
「留学すれば何かしらの成長がある」と安易に考えていた私は、大反省でした。
お子さんの身を案じ、費用も工面して、それでも行かせたいと考えるのは、ためになると信じているからだと思います。でもその思いが一方的だと、お子さんを苦しめることになります。
親が考える「留学の魅力」と、お子さんの「希望」。ここを先に話し合ってください。
行く前にやっておく3つのこと

① 何のために行くのかを、本人と話す
前の章のとおりです。ここが抜けていると、ほかを完璧にそろえても意味がありません。
「英語が話せたらかっこいい」でも「海外のごはんを食べてみたい」でも構いません。本人の口から出た理由が1つあれば、現地でつらい日があっても戻ってこられます。
② 最低限の英語を準備する
さらっさらの状態で行っても、どうにかなる部分はあります。子供は適応能力が高いです。
ただし小学生あたりからは、わからないことが続くとどんどん萎縮して、英語が嫌になってしまう子が出てきます。
「何となくわかることがある」。この感覚が、結構大切です。
たとえば私がアラビア語で「あなたの好きな色は何ですか」と聞かれても、さっぱりわかりません。でも「何」「好き」「色」の3つだけわかれば、だいぶ推測できますよね。
お子さんにとっての英語も同じです。ヒントがあるだけで察することができて、そこから「色を聞きたいときはこう言うんだ」と自分の英語にしていけます。
行く前に覚えておきたいこと
- 自己紹介(名前・年齢・どこから来たか)
- あいさつ(Hi / Good morning / Thank you)
- トイレに行きたいときの伝え方
- 「わかりません」「もう一度言ってください」の伝え方
- How are you? への返し方
息子も英語力は乏しい状態でしたが、あいさつと、簡単な質問の仕方・答え方だけは身につけて行きました。最初は困惑していたものの、知っていることが出てきた途端、楽しくなっていったようです。
話し慣れておくには、オンライン英会話がいちばん手軽です。わが家は小3から続けていて、これが英語の土台になりました。
③ 放課後と週末の予定を入れる
海外は勉強だけをするところ、という固いイメージを持つのはもったいないです。放課後と週末は、思いきり楽しんでください。
セブが楽しい=英語が楽しい。人の記憶はいい加減なもので、少々大変なことがあっても、全体として楽しければいい思い出になります。
外に出ることは、いろんな環境や人がいると気づくきっかけにもなります。
息子は、言葉がほとんど通じない相手にも気後れせず、自然に接していました。私のそばより、現地のガイドさんのそばで楽しそうにしていたくらいです。英語がわからなくても、伝えようとする姿勢のほうが大事なんだと思いました。
滞在中、親がやると変わる3つのこと

① 親が先に、あいさつする
お子さんは、親をよく見ています。そして、親以上にどきどきしています。
難しいことをする必要はありません。学校や食堂で会う人に、目を見て、笑顔で、あいさつをする。これだけです。
「Hello!」「Thank you.」。たったこれだけの会話でも、顔を合わせるうちに相手との間に空気ができてきます。相手が歓迎モードだとわかれば、お互いに話しかけやすくなりますよね。
ちょっとしたときに声をかけてくれるようになったり、会うと嬉しそうにしてくれたり。そんな関係ができていきます。
その少しずつ打ち解けていく姿を、お子さんに見せてあげてください。最初は後ろに隠れていた子でも、勇気を出して「Hi!」と言えるようになります。
② ギャップは、ポジティブな声かけに変える
食事の味つけ、虫の多さ、トイレ、置き引きやぼったくり。「ひゃーっ」となる場面は必ずあります。
子供は、日本でなじみがないものほど「おいしくない」と感じます。おいしく感じられないものは、やっぱりおいしくないんです。仕方ありません。
ここで親がネガティブなことを言うと、お子さんは海外そのものにネガティブなイメージを持ちます。これが膨らむと、英語への興味まで薄れてしまいます。
こんな声かけに変える
- この国では、こういう食べ物が好まれるんだね
- 日本と味が違ってびっくりするけど、この国のことが少しわかったね
- お菓子はどんなものを食べるのかな?
- おいしくないばっかり言ってたら、作ってくれた人が悲しむから、嫌な顔はしないようにしようね
- 暑い国は虫が多いんだね。日本で見たことない虫はいるかな?
- こんな危険があるよ。気をつけるには、どうしたらいいと思う?
自分の常識以外を否定して過ごすより、「なるほど、なるほど」という姿勢でいるほうが、ずっと楽しくなります。
③ 小さな変化をほめて、親も「難しかった」と言う
初めてレッスンを受けた日、萎縮してしまうお子さんは少なくありません。レッスンはお子さんが楽しめるように工夫されていて、先生も優しくケアしてくれます。それでも、先生が言っていることがわからないのはつらいんです。
これが続くと、どんどん自信をなくします。ここが親の出番です。
どんな小さな変化でもいいので、ほめてください。「挨拶できるようになったの!」「その発音、めちゃくちゃ上手になったやん!」。成長に気づかせてあげてください。
そして、親御さんもレッスンを受けるなら、ぜひ自分の気持ちも伝えてください。

ずっと勉強してきた大人でも難しいんだから、わからなくて当然。1つでも2つでも増えたらすごい。そう伝えると、お子さんの気持ちに余裕が生まれます。
ここで英語に自信を持てた子は、帰国してからの姿勢が変わります。やる気が芽生えているうちに、英語を楽しめる環境を用意してあげてください。
留学に行けないときは、目的から考える
時間、費用、不安。興味はあっても行けない事情は、どのご家庭にもあります。
そんなときは、「何のために行かせたいのか」を分解してみてください。日本で叶えられるものが、意外とあります。
| 留学の目的 | 日本でできること |
|---|---|
| 英語力を伸ばしたい | オンライン英会話に切り替える。レベルに合わせて進むので、教室より伸びやすいです |
| 異文化・度胸・コミュ力 | 国内留学の体験施設。ネイティブと数日過ごせます |
| 視野を広げたい | 読書の習慣づくり。リビングに世界地図やガイドブック、地球儀を置く |
読書を嫌がる場合は、本の選び方を変えてみてください。本が嫌いになる理由は、親が読ませたい本をすすめていて、子供が読みたい本ではないことが多いです。動物、恐竜、好きなキャラクター、図鑑。親から見て「どうなの?」と思う本でも、読むことに慣れるのが先です。
地図やガイドブックも、置くだけでは見てくれません。テレビで海外が出たときに、親が先に手に取って「へえ、こういうところなのか」と口に出す。それだけで反応が変わります。無理強いはしないのが鉄則です。
短期の親子留学のよくある質問
Q1. 10日間で英語力は伸びますか?
文法や語彙はほとんど動きません。伸びるのは発音と抑揚です。息子は1週間で、発音がDからBへ2段階上がりました。
ただ、短期留学のいちばんの成果は英語力ではありません。帰国後に自分から英語を取りにいくようになることです。ここが変わると、その後の伸び方が違ってきます。
Q2. 英語がまったく話せなくても大丈夫ですか?
大丈夫ですが、あいさつと「わかりません」の伝え方だけは覚えて行ってください。
何もわからない状態が続くと、小学生くらいから萎縮して英語が嫌になります。「何となくわかる」が1つあるだけで、最初の数日がまったく違います。
Q3. 何歳から行けますか?
わが家は息子が小1のときに行きました。親子留学なら未就学児でも受け入れている学校があります。
ただ、お子さんが自分の気持ちを言葉にできる年齢かどうかは見てください。行きたいかどうかを話し合えることが、短期留学ではいちばん大事です。
Q4. 子供が乗り気ではありません。行かせるべきですか?
おすすめしません。現地で話を聞いた子の半分以上が「親に言われたから」で、帰国の日をカウントダウンしている子もいました。
留学カウンセラーの方も、本人に行きたい意思がないときは止めることがあると話していました。まず、何のために行くのかを一緒に考えるところからです。
Q5. 親が英語を話せなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。むしろ、親が完璧でないほうがいい場面もあります。「今日のレッスン難しかった」と親が言うことで、お子さんの気持ちが楽になるからです。
日本人スタッフがいる学校を選び、日本語ガイド付きのツアーを使えば、滞在そのものは問題なく過ごせます。
まとめ|短期留学は、何を持ち帰るかで決まります
10日間の親子留学で、わが家が持ち帰ったものはこれです。
10日間で持ち帰ったもの
- 英語力が劇的に伸びるわけではない。ただし発音の上達は早い
- 英語を学ぶ意欲が育ち、帰国後の伸びに期待が持てる
- 外国人と接することへの抵抗がなくなる
- よくも悪くも、日本の常識が世界の常識ではないと知る
英語力を上げるために、いちばん効くのは「英語を好きになること」です。子供が自分から学びたいと思ったときの吸収力は、あっという間に大人を越えていきます。
その「好きになる」を刺激できたという点で、わが家の10日間は大成功でした。
ただし、繰り返します。お子さん自身に行きたい気持ちがあること。ここだけは、申し込む前に確かめてください。同じ費用、同じ日程でも、持ち帰るものがまったく変わります。